ヘルヤ・リウッコ-スンストロームの陶板|壁にかける小さな物語

窓辺に立つ人。雪の上をすべっていく人。眠っている女の子の、しずかな寝顔。

ヘルヤ・リウッコ-スンストロームの陶板には、いつも誰かがいます。物語の一場面を切り取って、そのまま壁にかけられるようにしたような器。見るたびに、その前後を考えてしまいます。

56年、ひとつの窯で

ヘルヤ・リウッコ-スンストローム(1938〜2024)は、1962年にヘルシンキのアテネウム美術工芸学校を卒業し、同じ年にアラビアに入社しました。そして2016年まで、56年間この窯で働き続けました。

56年というのは、途方もない長さです。同じアラビアで約50年を過ごしたビルゲル・カイピアイネンより、さらに長い。入社したときのアラビアと、辞めたときのアラビアは、会社としてはまるで別のものになっていたはずです。それでも彼女は、同じ場所で作りつづけました。

はじめは工業デザインの部門にいましたが、1967年にアートデパートメント(taideosasto)へ移ります。工場のなかにありながら量産とは距離を置き、作家が自由に手を動かすためにつくられた部門です。カイピアイネンやルート・ブリュックが仕事をしていたのも、ここでした。

1994年には芸術家教授の称号を、2001年にはフィンランドの文化功労者に贈られるプロ・フィンランディア勲章を受けています。2024年に亡くなりました。

ヘルヤ・リウッコ-スンストローム 陶板 窓辺の風景
ヘルヤ・リウッコ-スンストローム 陶板 窓辺の風景

おとぎ話と、すこしの寂しさ

彼女の陶板のモチーフは、おとぎ話と自然からきています。花、うさぎ、鳥、窓辺の雪景色。素朴で、少し子どもの絵のような描き方です。

ただ、かわいいだけで終わらないところがあります。彼女の作品にはしばしば、ほんのりとした寂しさが同居しています。楽しげな場面のはずなのに、どこか静かで、見ているとふと立ち止まってしまう。この気配があるから、飾って何年経っても飽きません。

たとえば「心の窓からの景色」と名づけられた一枚。窓の外を描いているようでいて、見えているのは内側からの景色です。赤いカーテンと白黒の床の陶板も、部屋の一角だけを切り取っていて、そこにいたはずの人は描かれていません。

かわいらしさと静けさが同じ一枚に入っていること。それが、彼女の陶板がただの壁飾りで終わらない理由です。

ヘルヤ・リウッコ-スンストローム 陶板 ヴィオラ
ヘルヤ・リウッコ-スンストローム 陶板 ヴィオラ
ヘルヤ・リウッコ-スンストローム 陶板 薔薇の花束
ヘルヤ・リウッコ-スンストローム 陶板 薔薇の花束

陶板の飾り方

陶板は、飾ってはじめて完成する器です。いくつか、扱ってきて感じたことを。

まとめて飾ると強い。 一枚だけだと壁に負けてしまうことがあります。大きさの違うものを2〜3枚、少しずらして並べると、それだけで壁の一角が決まります。

光の当たる場所に。 釉薬のわずかな厚みや、線のくぼみが、斜めからの光で立ち上がってきます。まっすぐ照らすより、横から光が入る壁のほうが表情が出ます。

フックの有無を確認する。 当店で扱うもののうち、32cmサイズなど背面にフック(吊り金具)が付いているものがあります。付いていない場合は、皿立てを使うか、壁掛け用のプレートハンガーで留めます。商品ページに記載していますので、購入前にご確認ください。

水まわりは避ける。 陶板は基本的に手洗い、というより「拭く」器です。食洗機や電子レンジは使いません。詳しくはヴィンテージ食器のお手入れガイドに。

日々の食卓にどう北欧の器を合わせるかについては、普段づかいの組み合わせ方もあわせてどうぞ。

陶板のほかに

56年ぶんの仕事なので、陶板以外にもいろいろあります。

家の形をしたキャンドルスタンドのタロ(Talo)。赤と青があり、灯りをともすと窓から光が漏れます。母の日のために作られたMors Kopp(母へのカップ)。ペンギンや猫をかたどった小さな陶器のブローチ。サウナに入るうさぎが描かれたマグ。

さらに、アラビアの枠を超えてイッタラのガラスカードも手がけています。白樺の落葉、スイレン、窓から見える夏の海。ガラスの板に絵を封じ込めたような、薄く光を通す作品です。同じ作家の陶とガラスを見比べられる機会は、そう多くありません。

アラビア Talo キャンドルスタンド レッド
アラビア Talo キャンドルスタンド レッド

わすれなぐさの陶板

陶板は、スウェーデンの蚤の市でもよく見かけます。ただし状態の良いものはそう多くありません。壁にかけられていたぶん、裏のフックが失われていたり、縁が欠けていたりすることがあるからです。店主が一枚ずつ手に取って、状態を確かめてからお迎えしています。

現在のお取り扱いはアラビアの商品一覧から、これまでにお迎えいただいたものは過去の商品からご覧いただけます。

アラビアのデザイナーについてはアラビアを築いたデザイナーたちで、ブランド全体についてはアラビア ヴィンテージ食器ガイドでご紹介しています。

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